コンクリート造の困ったを解決出来映えに「満足度200点」の家 / 京都府・Y様邸
このままではと改築に着手、大満足の快適な空間を手に入れられました。
こちらは鉄筋コンクリート造なんですね。
ええ、築40年になります。設計は主人の亡くなった父。設計士だったんです。当時のデザインなのか、部屋と部屋の間に微妙な段差が多かった。ベランダと部屋との間にも段差があって、そこで私、骨折したんです。あとはキッチン、お風呂、トイレと水回りがすごく狭くて。
築40年となると、ほかにも問題が?
冬は極寒の地でした(笑)。夏は暑いし、日中でもとても暗かったし、湿気でじけじけするし。床は無垢の木じゃなく合板フローリングで、足を着くとぴちょっとなるんです。主人はこの家に慣れていたからそれが普通だと思っていたみたいですけど、私は実家が木造でそんなことはなかったので、コンクリートのお家だからかなあ、と気になっていました。
高気密のせいで結露しやすく、湿気が多かったY様邸。勾配のない陸屋根の防水がきかず、3Fリビングに雨漏り
それで改築を決意された?
始まりは雨漏りです。私が娘を産んだ年の秋、台風の夜にたったったっと行進している夢を見たんですね。夢から覚めてもたったったと聞こえるから、何かなと思ったら雨漏りで。そのときは主人が自分でコーキングして済ませたけど、次の年また同じことが起こって改めて防水工事をしてもらったんです。それと、このままだとダメだと思ったのが、ベッドに虫がわいたんですよ。
えっ、虫ですか!?
ベッドが何か光るなとよく見たら動いているんですよ、うわーっと思って調べると、湿気を好む小っちゃいダニで、娘がハウスダストアレルギーになってしまわないか心配になったんです。段差も多いからいつ転ぶかも分からない。それでまず家庭内交渉を。主人に改築しよう、やるからには徹底してやらないと結局お金がかかる、一気にやろうと。
3Fは間取りを変え、ドア位置も変更。階段につながる左手のドアは、イマガワの縦格子戸。細い格子が生む縦のラインは和の風情があってモダンな印象も
階段と3階廊下部分とを分ける壁はなく、奥の部屋の入口には廊下との微妙な段差が
リビングとキッチンとの間を仕切る壁を解体。音がすごかったそう…
すべてを取っ払ったリビング。最終的には壁は珪藻土、天井や床は杉板に
まずは天井や壁全面に断熱材のアイシネンを吹きつける作業からスタート
当初使用する予定だった木造用のアイシネンは費用が高くつき、空間が狭くなるデメリットがあると判明。「アイシネンは一番のこだわり、譲れない」という奥さまに応え、最終的にアイシネンの非木造用、硬質タイプのMDR-200を施工
明るくなった階段。足触りもさらさら
階段の木の手すりは大工さんのお手製
階段は意外にもコンクリート製だった
ご主人を説得されたんですね。ご夫婦それぞれのこだわりは?
主人は特にこだわりはなく、私に全権を委ねてくれました。それでアイシネン、断熱材から調べたんです。この家は頑丈そうなのに機能が低下しているから、寒さやジメジメを解決するには断熱材だ、と。でも予算もある、一番よい選択肢は何なのかと本を読んだり、資料を取り寄せたりしました。エビナ製材は木の家中心だけど、アイシネンを使っていたので資料請求しました。
資料請求は何社に?
10社ぐらいです。ある大手メーカーの方は資料持参で「今、ご自宅前にいます」と電話してきて、値段は予算オーバーの新築並み。あとは郵送でと指定しているのに「持って行きます」の一点張りだった会社、自社に決まったかのように次の打ち合わせはいつにしましょうと言ってくる会社も。コンクリート造の経験がないからか、あちこち採寸して帰った後、いくら待っても見積もりを送って来ない工務店もありました。
いろんな会社が…。見学会にも行かれましたか?
行きました。「建築士と作りあげる家」をコンセプトにした会社の内覧会に。やたらゴージャスに仕上がっていて、お金もすごくかかっている感じでした。建築士さんと好みが合って且つお金があればいいけれど、私はそこまでこだわろうとは。
狭くて使い勝手の悪かったキッチンを拡張し、リビングとの間仕切り壁を取って、ひと続きの空間に。システムキッチンはタカラスタンダード。いくつもショールームを回った結果、ホーローキッチンは丈夫で長持ち、手入れが楽とセレクト。奥に見えるリビングの本棚やテレビ台は大工さんの造作で、ぶつかっても痛くないようにと板の角はすべて丸く仕上げ
リビングにはワンポイントでお気に入りの照明を。奥さまが一目惚れしたシャンデリアは銅製のハンドメイド作品。シンプルでいて存在感があり、灯すときれいなオレンジ色。掃除のしやすさも長所だそう。制作元はAtelier Key-men
キッチン奥には作り付けの木製棚が。棚板は可動、角が丸く加工されて安全
照明はメリハリを付け、リビングまわりはシャンデリア以外ダウンライトに
リビングの一角に腰を落ち着けているのは、奥様がもともと持っていた茶箪笥
杉材を使った縦格子戸は、閉めていても格子の間から柔らかな光が射し込む造り
キッチン奥は、奥さまが好きなオレンジ色の壁紙を貼ってアクセントウォールに
キッチン袖壁の柱に、愛娘の身長を計った印が。すくすく成長中!
希望と予算との兼ね合いは難しいですよね。
やたらと見積もりを出してくれる会社もあって、希望通りだと予算の倍以上になるプラン1、予算内で叶えるにはワンフロアだけ改築するプラン2、みたいな出し方をされるんですね。どこを削ればできるといった話が全然できない。自分の家のことなのに、希望を聞いてもらえないと思いました。
エビナ製材はそういった会社とは違いました?
資料で言うと、他社の資料は建築費用が総額で書いてあるんですけど、エビナ製材の資料には費用の内訳が書いてあったんです。それを見て、主人もここを削ればいけると乗り気に。海老名さん自身は、ガツガツしてなさすぎと言うか(笑)ずる賢くなくて信用できそう、フレキシブルに対応してくれそうだなと。私は断熱材から入ったので、それをちゃんと勉強している人がよかった。それでエビナ製材に決めました。
打ち合わせはいかがでした?
4カ月ぐらい毎週していました。楽しかったけどそのたびに、壁紙やタイル、ドアなどと決めなきゃいけない期限が来るのが大変で。特に悩んだのはドア。新築じゃなく改築なので、はめられるサイズが限られるんです。ちゃんと入るか分からないまま選んだドアが希望どおり入ったときは嬉しかったですね。
玄関はリクシルの採風ドア。鍵を閉めたまま、たっぷり風を取り込める開閉口付き
米国シンプソン社の木製室内ドア。ガラス部分はアイスガラスをセレクト
玄関脇の納戸を、玄関から直接入れるウォークインクローゼットに変更
デッドスペースだった階段下も有効利用して収納に。調湿のため中は杉板貼り
木の節がハート型になっている、と大工さんが発見。見える位置に残したそう
階段の反対側にはあたたかみある木製ハンドレールを設置
玄関先には、お人形さんをモチーフにしたお気に入りの壁飾り
改築中の現場にも来られた?
週に2、3回は。海老名さんがいないときに差し入れを持っていくと、大工さんが「奥さん、ここどうします?」と聞いてくれるので、その場で確認して「こっちでお願いします」と。大工さんも「直で聞けるから楽」と喜んでくださいました。娘も楽しかったみたいで、大工さんを「どんくさん、どんくさん」と言っていました。
大工さんともよく話したんですね。
そうですね。話して建築知識が増えていくのが楽しかったです。例えば、フローリングの板をひく向き。広く見えるから廊下はこう引いたほうがいいとか、そういうのを教えてもらうのが楽しかったです。
作り付け収納も頼まれました?
私、ちょっとでも隙間があるとそこに合わせて余計なものを買ってしまうので、ぴったり収まるように作ってくださいとお願いしました。大工さんは、子どもがいるからと棚やテーブルの天板の角を丸く削ってくれてて、後から「しときましたよー」と。廊下の鏡の位置も、子どもが夜見ても怖くないよう高さを調整してくれました。細かく気づいて配慮してくれて、ありがたかったです。
2Fフロアは経費を抑えるために元の床を残し、その上から杉板を張る方式に。年月が経つときしむ恐れがある箇所は大工さんが事前にしっかり補強済み
寝室は開閉スペースのいらない引き戸に。ドアはシンプソン、引き手はウッドワンの特注品
上吊り引き戸だと床にレールを敷く必要がなく、廊下と段差のないバリアフリーに
明るい子ども部屋。壁紙は機能性を重視し抗アレルゲンのものを採用。床はやわらかい杉板で、傷がついても良い味に
掃き出し窓の向こうは裏庭で、以前は防草シートを敷きっぱなしだったのが、現在は手入れをはじめ、芝生を育成中。だんだん緑になっていくのが楽しみ
奥さまが見初めたカーテンは、インテリアファブリック専門店CB SOWMのもの
ペーパーアートのハニカムバルーンが、子ども部屋のポップなデコレーションに
3階、リビング反対側に位置する部屋。窓はもともとある枠に新しい窓をかぶせるカバー工法を採用。壁工事不要で省コスト
CB SOWMのロールスクリーンもお気に入り
本当はこの生地でカーテンを作る予定が、生地が足りずクッションカバーに…
以前より広くなったトイレには、好きなオレンジ色のシェードの照明をつけて
DIYはされたんですか?
DIYは床の蜜蝋塗りを。ここでようやく主人が登場するんです。私の両親も加わって総出でリビングの床とドア、トイレの中の壁、手で触るようなところ全部塗りました。娘もちょっと手伝ってくれましたよ。
改築後のお住まいはいかがですか?
以前と全然違います! アイシネンや木、珪藻土のおかげか湿気を感じずカラッとしていて、冬はとても暖かく、夏はちょっと冷房を入れたらずっときく。光熱費も安くなりました。リビングは明るくなったし、床をゴロゴロしても冷たくも痛くもないし。主人のお気に入りもリビング。娘もリビングに本やおもちゃを持ちこんで遊んでます。ここで家族で過ごす時間が一番長いですね。
振り返ってみて、今回の改築の満足度は?
100点どころか、200点です。本当にやりたいようにさせていただいて。それに思っていた以上に快適で、暮らしも気持ちも変わりました。以前はすべて古いし、空気を入れ換えたって湿気はどうにもならない、掃除も嫌になっていたのに、今は掃除がしやすくなったというか、掃除をしたくなるんです。そういう気持ちでいられる家になりました。
改築を考えている方に一言お願いします。
ある意味、この楽しみが残されているのがうらやましい(笑)。大変だったけど本当に楽しかったから。皆さん予算やら何やら事情があって、少し頑張れば納得できるけど辞めておこうとなるかもしれない。でも二度とやらないと考えれば、ちょっとの努力はどうにかこうにかしてもいいんじゃないかなと思います。
ありがとうございました。
(インタビュー:茂内希保子 撮影:江原英男)